コンテンツへスキップ

農村生活者と自給農家

今、中山間地域の農業は大きな変革期にある。中山間地域では高齢化・人口減少と後継者不足により農業をやめようとする人や農地を手放そうとする人が急増している。この状態は、農地の受け手がいない地域にとっては耕作放棄地の急拡大と農村崩壊をまねきかねない危機であるが、経営規模拡大をめざす農業者や農業新規参入者など、あたらしい農業を進めようとする者のいる地域にとっては大きなチャンスである。農地をこれほど容易に入手あるいは譲渡できる時代はかつてなかったからである。将来の中山間地域の農業はこの新しい農業の担い手によって再構築されるだろう。そして、農村社会はこの変化に対応して再編成されるにちがいない。この変革期を生き残り地域の将来を担うスマートなつよい農業経営とは何か。ここではすべての農村生活者の共通の基礎・原点である自給農業に関する情報を集めました。

小規模米農家の経営継承は危機状況
農家はもっと減っていい
ー大淘汰時代の小さくて強い農業とは? 久松達央 光文社新書

人口減少時代の農業と食 窪田新之助・山口亮子 ちくま新書

自給農業はすべての農村生活者の共通の基礎・原点です。e田舎・志賀郷は、変革期の生き残りをめざす農村地区は「耕作を希望するすべての地区生活者に本人の希望にそった自給農業にとりくむ機会を与えるためのしくみ(自給農園:耕地面積3a~10a)を早急に整備する」ことを提案します。自給農業の大きなプールから新しい農業を担うプロ農家は出てくるにちがいありません。

自給農家:農村にすみ、あるいは都市にすみ週末に農村に来て、自分が食べるコメ・野菜・果物などを栽培し自給農業をしながら田舎生活をおくる(たのしむ)ことが目的。農作物を販売して収入を得ることは目的としない(業としての農業ではない)。生活に必要なお金は別の方法でかせぐ(年金を含む)。半農半x(塩見直紀, 2014)ともよばれる。コメ・野菜を自給する場合もあるが野菜だけ栽培する場合もあり様々なレベルがある(家庭菜園に分類されることもある)。農村に居住する(家を持つ)ので農村の社会生活には参加する。農村や近郊都市で他業種(公務員、農協、企業、商店等)に勤務しながら田舎に住み自給農業をする人、かつて農業に従事していたが現在は高齢のため年金生活をしながら自給のための野菜つくり等をしている人、かつて都会でサラリーマン生活をしていたが定年後田舎に帰り(移り)自給農業をしている人などさまざまな人がいる。また、将来、兼業農家・専業農家として農業経営をめざす人が農業入門・田舎生活入門として自給農業をおこなうこともある。

自給農業に必要な農地面積:イネつくりのための水田は、家族1人あたり2a。2人家族では4a、4人家族では8aとすると余裕を見て9aあれば十分でしょう(下記書籍1.参照)。野菜つくりの畑は、2人家族で4mx5m=20m2、4人家族では40m2とすると余裕を見て1a(100m2)あれば十分でしょう(下記書籍2.参照)。*この農地はあくまでも自給農業が目的です。自給利用で余った分は販売することもできますが、大量に作って遠く離れた家族に送ったり親せきや知人に販売したりすることは目的ではありません。地域の作物を大量に必要とするときは地元のプロ農家から購入するのが適切です。

自給農業のための農地確保問題:自給農業のための農地はすでに農地を持っている場合以外は、購入ではなく借地によるのが適切です。農地の貸借や売買は農地法によって厳しい条件が課せられているからです。自給農業のための農地は面積が小さく、自給農業のための農地であって業としての農業のための農地ではない、しかも農地転用ではなく農業に使うという特徴があります。しかし、この小さい農地であってもその借地や購入は農地法等の適切で上手な運用によらなければ実現できません。地域の自治組織等が農業者の協力を得て準備するのが適切です。農地法等の批判的検討と現実的な農地の入手(借地、購入)方法については別のページで論じます。

書籍紹介
1.だれでもできる小さい田んぼでイネつくり
 笹村出著 農文協
まえがき
第1章 小さい田んぼは昔のイネつくり
第2章 田んぼの借り方・始め方
第3章 小さい田んぼのイネつくりの基本
1aで60kgとれるまでのステップ
第4章 小さい田んぼのイネつくりの実際
第5章 さらなる安定多収のために
あとがき

2.野菜づくり入門 藤田智 実業の日本社
はじめに
第1章 実もの野菜のつくり方、楽しみ方  11種+6種
第2章 葉物野菜のつくり方、楽しみ方  13種+8種
第3章 根もの野菜のつくり方、楽しみ方  11種+6種
第4章 野菜づくりの基本作業

参考書籍
マイクロ農業のすすめ 森永卓郎 農文協
農業はじめてBOOK 淵野雄二郎 監修 小学館集英社
小さい農業で暮らすコツ: 養鶏・田畑・エネルギー自給 新藤洋一 農文協
自給農業のはじめ方 中島 正 農文協
だれでもできる小さい田んぼでイネつくり 笹村出著 農文協
野菜づくり入門 藤田智 実業の日本社
土と肥料の作り方・使い方 
後藤逸男 家の光協会
週末田舎暮らしの便利帳 
成美堂出版
「地方ならお金がなくても幸せでしょ」とかいうな! 
阿部真大 朝日新書

----------------------------------------------------------------------------------------------------
農村生活者のタイプ:自給農業は農村生活者の共通の基礎である

農業関係以外の人: 農村にすみ商業・工業・サービス業・その他のしごとに取り組む人、あるいは、農村にすみ近隣の小都市へ勤務する人。農村にすむので農村の社会生活に参加する。

自給農業者:農村にすみ、あるいは都市にすみ週末に農村に来て、自分が食べるコメ・野菜・果物などを栽培し自給農業をしながら田舎生活をおくる(たのしむ)ことが目的。農作物を販売して収入を得ることは目的としない(業としての農業ではない)。生活に必要なお金は別の方法でかせぐ(年金を含む)。半農半xともよばれる。コメ・野菜を自給する場合もあるが野菜だけ栽培する場合もあり様々なレベルがある(家庭菜園に分類されることもある)。農村に居住する(家を持つ)ので農村の社会生活には参加する。農村や近郊都市で他業種(公務員、農協、企業、商店等)に勤務しながら田舎に住み自給農業をする人、かつて農業に従事していたが現在は高齢のため年金生活をしながら自給のための野菜つくり等をしている人、かつて都会でサラリーマン生活をしていたが定年後田舎に帰り(移り)自給農業をしている人などさまざまな人がいる。また、将来、兼業農家・専業農家として農業経営をめざす人が農業入門・田舎生活入門として自営農をおこなうこともある。

農業法人従業員:農村にすみ、中・大規模の農業法人や他の農業経営者にやとわれて賃金を得ながら農業に従事する。サラリーマンとしての農業従事者。また自分が食べるコメ・野菜・果物などは自分で栽培して自給農業をする場合が多い。農村ではなく近郊都市に住みパートや季節労働者・農業ボランティアとして農業に携わる人もある。将来、所属する農業法人での地位向上をめざすが、兼業農家1あるいは小規模専業農家1としての自立をめざす人もいる。

兼業農家1:農村にすみ、農作物を生産・販売して収入を得るが、基本的に1家族でできる規模の農業を行う。農繁期のみアルバイトを雇うことがある。別の職業(年金を含む)でも生活に必要なお金を稼ぐ兼業農家。田舎生活を楽しむことが目的ではなく、独立直販型経営を行う自営農業者として収入を得ながら生きることをめざす。また自分が食べるコメ・野菜・果物なども自分で栽培して自給農業をする。この中には定年後農業者が含まれる。将来、中規模専業農家として経営規模拡大をめざす人もいる。

兼業農家2:農村にすみ、農作物を生産・販売して収入を得るが、基本的に1家族でできる規模の農業を行う。別の職業(年金を含む)でも生活に必要なお金を稼ぐ兼業農家。田舎生活を楽しむことが目的ではなく、自営農業者として収入を得ながら生きることをめざすが、他の農業法人・JA・商社・協同組合と契約して部会員・協力農家として指定された作物を指定された方法で生産する。経営は独立型ではなく下請け企業に近い。また自分が食べるコメ・野菜・果物なども自分で栽培して自給農業をする。この中には定年後農業者を含む。将来、兼業農家1としての自立をめざす人もいる。

小規模専業農家1:農村にすみ、農作物を生産・販売して収入を得るが、基本的に1家族でできる規模の農業を行う。田舎生活を楽しむことが目的ではなく、独立直販型の自営農業者として収入を得ながら生きることをめざす。農繁期のみアルバイトを雇うことがある。また自分が食べるコメ・野菜・果物なども自分で栽培して自給農業をする。将来、独立経営の中規模農家をめざす人もいる。

小規模専業農家2:農村にすみ、農作物を生産・販売して収入を得るが、基本的に1家族でできる規模の農業を行う。田舎生活を楽しむことが目的ではなく、自営農業者として収入を得ながら生きることをめざすが、多くは他の農業法人・JA・商社・協同組合と契約して部会員・協力農家として指定された作物を指定された方法で生産する。経営は独立型ではなく下請け企業に近い。農繁期のみアルバイトを雇うことがある。また自分が食べるコメ・野菜・果物なども自分で栽培して自給農業をする。将来、独立経営の中規模農家をめざす人もいる。

中・大規模農業法人:法人経営で農業労働者を雇い中・大規模の農業経営を行う。会社としての農業。農繁期は季節労働者やアルバイト・農業ボランティアを雇う場合が多い。経営は独立直販型の自営経営をする場合も、JA・商社と契約して協力農家として指定された作物を指定された方法で生産する場合も、両方の混合型もある。従業員は自分が食べるコメ・野菜・果物などは自分で栽培して自給農業をしている場合が多い。

商社・JA・協同組合:兼業農家2、小規模専業農家2、中・大規模農業法人を相手に企画・栽培指導・販売だけをおこない自らは生産そのものは行わない。従業員が農村に住む場合は自分が食べるコメ・野菜・果物などは自分で栽培して自給農業をする場合が多い。
----------------------------------------------------------------------------------------------